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| 津軽海峡・想い出の旅紀行 第一回「秘湯探訪 函館・道南編」/2002年7月3日アップ |
アイヌモシリの歴史は長く、北海道の歴史は浅い。 今金町の地名は、開拓の祖である今村藤次郎と金森石郎に由来する。温泉のある美利河地区はピリカと読み、アイヌ語の「ピリカ、ベツ」(美しき川という意味)に由来する。函館周辺では早くから失われていった先住民の歴史は、北上するほどに明らかになっていき、そして大地の自然も深くなっていくようだ。 巨大なダムに流れ込む美しい川に沿って山峡の道を進む。ほんの少しだけ上流へ行くと、川はすぐに清流の姿を取り戻した。「熊すべりの盤」と名づけられた断崖の横を抜け、温泉鍾乳洞を過ぎると、ブナの深い森にぽっかりと三角屋根のログハウスがあらわれる。ここが奥美利河温泉である。 入浴料は宿泊施設(山の家)でもある管理棟を訪れて支払う。カーサン(※)がお金を受け取りながら、「ここの温泉はぬるいけども、じぃっくり浸かってれば、じわーっとあったかくなるからね」と話しかけてきた。トーサンと二人で温泉を管理しているという。泊まり客がいない日は山を下りて自宅に帰るが、連休や夏休み期間中はしばらく泊まり込むことになるという。一日おきにトーサンが朝4時に起きて、タワシを手にして浴槽から壁まで丁寧に3時間かけて掃除するそうだ。 露天風呂は浴槽というよりも清水を湛えた池のようだ。小石が敷きつめられてあり、適度に足裏が刺激されて気持ち良い。こんこんと湧き出る温泉が、そのまま湯船に注ぎ込んでいく。すみきった水面が、渓谷の風にかすかに揺れる。静かである。 耳を澄ますと鳥の鳴き声が聞こえた。深い山奥からゴウゴウと、近くのせせらぎからはザブザブと、ふたつの川の音を感じた。 温泉の案内板にはこう書かれていた。「奥美利河温泉は明治43年、金鉱を探索中だった故・東条九郎太氏によって偶然発見された」。開拓者を癒した湯は、いまも訪れる人の心と体に染み入る湯として、静かに湧き出している。 ※かーさん・とーさん:親しみをこめた中高年男女の呼び名。
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| 取材・執筆 高山 潤(たかやま じゅん) 函館市在住のフリーランスライター(http://www2.odn.ne.jp/monokaki/)。取材・執筆のテーマは、民衆史・地域史の聞き取りから、街づくり・福祉の報告、函館・青森・北海道の観光(旅・温泉・食材など)まで。 北海道新聞(道南版情報誌に連載)・月刊誌「ナトラ」「一個人」「じゃらん」・市町村の要覧やパンフレット・国公立機関の広報誌や企業PR誌などへ寄稿。「node:0138」(http://www.node0138.com/)、「bit and ink」(http://www.bitandink.com/)などにも参加。 |
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